先日、本屋でふと目にして、思わず買ってしまいました。
「はっか油の愉しみ」前田京子著(マガジンハウス刊)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっか油と暮らし始めていったいもうどれぐらいになるだろう。~
はっか油への恋文をいつかは書きたいと思っていた。~」

著者のはっか油へのひたむきな思いが、ぐいぐい伝わってきます。

読後には、はっか油のような清涼感を感じました。

さて、はっか油といえばハーブのペパーミントを連想します。
正確にいえば、日本のはっか「和薄荷」は Mentha canadensis 。一般にハーブティーとして流通しているペパーミントは西洋ハッカで、Mentha piperita です。
摂取した時の味や香りは若干違いますが、機能性の基本的なところは同じと考えて良いと思います。

 

 

 

 

 

 

 

主成分はL-メントール。これが様々な機能性を現します。
さわやかな香り、すっきりした服用感は食欲をうながし、眠気を吹き飛ばし、鼻づまりを解消します。
注意力や集中力を高める反面、鎮静(心を鎮める)の機能性も持ちます。
肝臓や胆のうにも働きかけます。なので、胆石等で胆道が閉塞している恐れのある方は使えません。

 

 

 

 

 

 

 

 

L-メントールは医薬品としても使われます。
消化管の平滑筋に対して鎮痙作用を示し、その薬理学的作用は、「電位依存性L型カルシウムチャネルに作用し、チャネルの開口を阻害することにより膜電位の発生を消失させ、平滑筋収縮を抑制する」と考えられています。(参考文献:日病薬誌 第47巻12号)
医療現場では、上部消化管内視鏡時の胃蠕動運動の抑制に用いられます。
従来からその検査では、ブスコパンやグルカゴンといった医薬品が用いられていますが、その医薬品の作用機序より緑内障や前立腺肥大、糖尿病などの疾患がある患者さんには使えません。
そこで、8年程前まではそのような患者さんに使っていただくために、ペパーミント油とL-メントールを主原料とした、界面活性剤で水中に分散させた院内製剤を調製していました。
現在は、製薬会社から「ミンクリア内用散布液0.8%」という医薬品が販売されています。使い方も注射ではなく、消化管粘膜に直接に噴霧します。
病院勤務時代、製剤申請した医師が「不思議とピタッて(粘膜の動きが)止まるんだよ。」と言っていたことを思い出します。

ペパーミント油は、筋肉に対し鎮痙する機能性から筋肉痛に応用され、塗布剤の市販薬に古くから使われていました。
イギリスでは、腸溶性カプセルに封入して過敏性腸症候群に内服する方法も行われています。ただし、カプセルの溶解する部位により、その刺激性が問題となる恐れはあると考えます。
かつて、看護の領域では、メンタ湿布と呼ばれ、腸管の動きがわるい時にペパーミント油を滴下したお湯で腹部の湿布をして、蠕動運動をうながすことも行われていました。ペパーミントの清涼感が、反射的に作用していると考えられます。
国外ではペパーミントティーを過敏性腸症候群に使用する医師もいますし、ジンジャーと併用して、嘔気にも応用可能です。
ヨーロッパでは、ジャーマンカモミールとブレンドして、胃の不調に使われます。

なじみのあるハーブなので、様々な研究が行われていて、消化管に対する作用以外にも、ヒスタミン放出を抑制してアレルギーに効くとか、過剰摂取は生殖機能の低下を及ぼすなど、いろいろな研究結果が報告されています。

ハーブの中でも、とくにメジャーなハーブ、ペパーミント。
ティーとしても、オイルでも、日常生活で最も応用可能なハーブだと思います。

皆さまも、使ってみては。
きっと、「はっか油の愉しみ」みたいな、素敵な生活になるでしょう。